話その2 もっと仏が好きになる見仏講座(1)
■仏教の世界観を知ろう 仏像とは?
まず仏像とは何なのか考えてみよう、特に見仏でなければ普通、仏像は拝む物。しかし信仰の対象ならば、キリスト教みたいに、教祖であるお釈迦様の像だけでもいいはず。何故たくさんの種類の仏像があるのだろう。
元々日本人は自然に神様が宿ってると考えて、共通した信仰というものが無かった。ここに外来の仏教が日本で布教するために、その教えを分かりやすくビジュアル化したのが仏像。今でいうとマンガで勉強するみたいなものだろうか。朝廷は日本を統一するために都合がいい仏教を利用し、どんどん仏師を受け入れ日本に仏像を招来させた、だから古い白鳳時代以前の仏像は外国産が多い。
極端に言えば仏像は仏教を宣伝するための道具に過ぎなかったと言える。しかしその世界観を表現しようとする仏師の様々な工夫が、実に面白い。
こうして考えると、ひとつひとつの仏像の造型を鑑賞するのも大事だが、それらが組み合わさって表現される仏教の世界観を感じる事が仏像鑑賞の醍醐味といえるのではないだろうか。
■仏教の世界観を知ろう 蓮華蔵世界(れんげぞうせかい)
東大寺の大仏が座っている台座の、蓮弁(花びら)に線彫りで表現されているので有名な蓮華蔵世界。
これは仏教の世界観で、海の上に巨大な蓮華が咲いており、さらにその中の海に咲いている無数の蓮華の一つ一つの中にまた海があって、その中心に須弥山という高い山がそびえ立ち、ナンダ、ウバンダの2匹の龍が住む二龍王の世界、その上の邪鬼が住む夜叉宮(やしゃぐう)、その上の四天王が警護する四天王宮、さらに上の山頂、梵天、帝釈天ら三十三天が住む刀利天(とうりてん)、その上空の二十五段階に分かれた、さまざまな仏と菩薩の住む二十五部が存在し、各仏は頭上から小さな化仏を生み出して、無数の蓮華の上空が仏で満たされ、一つにつながった大仏界になっているという壮大な世界観。さらにその世界を毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ 東大寺大仏殿の大仏)が統括している。
仏像が蓮に乗っている表現や、光背に化仏を付けている表現、祭壇を須弥壇というのはこうした世界観が由来。知っているとそうした表現に、とてつもなくスケールの大きなものを感じて面白い。
■仏教の世界観を知ろう 密教(胎蔵界、金剛界)
密教の世界観を表現した仏像としては東寺講堂の、立体曼荼羅が有名。
仏教の世界観をさらに立体的に捉えたのが密教で、球体のような密教の世界を分かりやすく分類したのが曼荼羅。簡単に理解できる理論ではないが、大雑把に言うと形の世界「胎蔵界(たいぞうかい)」と働きの世界「金剛界(こんごうかい)」に分かれる。球体の中心にいる毘盧遮那仏を胎蔵界の大日如来と金剛界の大日如来に分け、大日如来が両界の中心に配置されている構図。
密教により各仏の位置と法力が明らかにされ、密教仏はぞれぞれの法力を具体的に造形化した、手や足が何本もある、人間の姿とはかけはなれたものが多い。
しかし法力を分かりやすく表現しようとする仏師達の試みは面白く、密教仏から仏像にハマる人も多い。
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